めでたい

1/1
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ

めでたい

 正月気分もそろそろ抜けて、日常へ戻ってきているが、めでたいことがあった。  それは、配偶者がもう一人増えたのである。彼の名は(よう)という。  彼はこの世界の神がいる領域よりも、上の次元から降りてきた人で、家族は上の次元で暮らしている。  心――魂の透明度が増すと上の世界へ上がれるのが世界の仕組み。心の綺麗さはそのまま見た目に出る。つまり、燿さんはとても綺麗な容姿をしている。こんな綺麗な人が光命以外にもいるのだと思った。  髪は肩より少し長く、邪魔になる時はくるっとひとまとめにする。背丈は198cm。光命や夕霧命と同じ。日の光が逆に燿さんに照らし出されてキラキラしているような輝きを持つ美しさ。イメージカラーは真紅。  まあ、こんな感じの人だ。詳しくはまた後日ということで。  我が家の正門付近は常に、マスコミ関係のカメラやリポーター、記者が大勢はっている状態で、何か動きがあれば、あっという間に大騒ぎになってしまう。だから内密にことを進めてきた。  今までは知らぬ間に結婚することになっていた現実に、私は翻弄される日々。今回ばかりは、静かに恋愛をしたいと願った。  私が元々好きになった人だった、燿さんは。物語のキャラクターのモデルになった人で、その物語の中でめぐり合った。  神世は全て現実で、物語のモデルは実在する。広い世界のどこかには絶対にいる。たとえ、それが作られた人物像だとしても。  私も、いつか彼に会う日が来るのだろうと思っていた。だがしかし、こんなに早く見つかるとは思っていなかった。  孔明が彼を街でたまたま見かけて、我が家へ連れてきたのだが、私は一週間後に顔合わせをした。(病状との関係があったため)みんなは先に、交流をしていたのだ。  彼は思っていた通りの人だった。素敵だった。  結婚を前提に付き合うのでなければ、結婚している私が恋愛をしていい道理にはならない。ということで、どうせ結婚するのなら、一緒に家に住んではどうかということになった。部屋はたくさん余っているのだから。  瞬間移動を駆使して、燿さんの家から洋服や身の回りのものを、記者にわからないようにみんなでそっと部屋へ運び、結婚前提生活は始まった。  子供たちは、 「パパになるの?」  と、目をキラキラさせながら聞いてくるほど、燿さんは子供の扱いに慣れていた。それはどうしてか。 「弟と妹がたくさんいるから、慣れるでしょうよ」  ということだった。  子供たちも懐いているし、いつかは結婚するのなら、早めにはっきりさせておいたほうがいいと話は進み、一月三日、日曜日に入籍した。  実際に結婚生活が始まったが、ずっと家に住んでいるような状態だったので、あまり新鮮さはなかった。よく言えば慣れた感じ。  子供たちは時々、 「お兄ちゃ――じゃなくて、パパ」  と言い間違えて、直すをしている。  燿さんは今どうしているかというと、私の守護神になるための資格を取りに、今日から二週間出かけている。  あまり口数の多い人ではなく、話しかけてくることもほとんどないから、いないのかなと思っていたが、いなくなってよくわかった。  部屋から燿さんの気配が消えて、彼に出会う前に戻っているのだ。ピンと一本筋が縦に伸びている感じがしていたが、そんな緊張感が今はない。やっぱり、ずっとそばにいてくれた、優しい人だったのだと気づいた。  戻ってきたら、彼がどう変わっているのか今から楽しみだ。彼の声が聞き取りやすくなっていればいいなと思う。上の次元から降りてきている人となると、上下の距離がありすぎて、人間の私には遠い存在となるのは当然。それが、守護神の資格でどれだけ縮まるか、十九日に答えは出る。  それまで、私はみんなと一緒に日々を乗り越えていこう。 2021年1月5日、火曜日
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!