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「……掃除、するかぁ」
床が見えない程、所狭しと積み重なる物の山。始める前から挫けそうになる。しかし、今度ばかりは綺麗にしなければいけない。
始まりは母の一言だった。
「正月までに千恵の部屋が片付いていなかったら、今度のお年玉なしだから」
遅い朝食を食べていた時に突然ビシッと指を突き付けられて宣言された。驚いて一瞬固まってしまう。言葉を理解するとすぐに抗議したが聞いては貰えない。こういう時の母は言った事は絶対実行する。リビングに居た父に助けを求めるように目を向けたがサッと逸らされてしまった。頼りにならないのは過去の経験で分かっていたがやっぱりダメだった。
「これから出かけてくるから留守番よろしくね。正月まではまだ数日あるんだから、ちゃんと掃除しておくのよ」
母は言うだけ言うと父を連れてさっさと出て行ってしまった。
こうして私はお年玉の為、掃除をしなければならなくなったのだった。
片付けようと近くにあった服を手に取るが、下から別の服や本、ぬいぐるみが顔を出す。
「一人じゃ絶対に終わらないよ。でも、どうにかしないと。お年玉で買うものも、もう決めてたのに……」
絶望感が私を襲う。片付けられる人間だったらこんなことになっていない。どこから手を付けたらいいのか分からないが、ここで諦めたら年明けの楽しみの8割が無くなるといってもいい。なんとか母も納得させてお年玉を死守しなければいけない。
しばらく部屋の中で頭を抱えていたが
「あれだ!」
あるものを見つけ秘策を思いついた私は早速掃除を開始した。
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