彼の足あとどこまで続く

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 なんで頑なに裸足だったのだろう。  自慢? うーん、それはないか。たいして大きい足でもなかったし。それなりにごつい男の足だったけどただそれだけ。 「次いこ」  また床ぎりぎりに頭を下げて、足あとを探す。こっちか、と立ち上がるとテーブルの脚に小指をぶつけた。 「いっ……たあ」  ガン、とすごい音がしたとき、私は確か夕飯の用意をしていたと思う。 「いってえ!」 「ど、どうしたの」  慌てて駆け寄ると、彼は右足をぎゅっと握りうずくまっていて。 「小指が……とれた……」 「うそ?!」  そんなことあるのって焦ったのに。 「うっそー」  テーブルの角にぶつけただけ、という彼は痛そうながらも右足を見せてへらりと笑った。 「もう、ビックリさせないでよ」  べしん、と彼の足を叩いたけどそれがちょうどぶつけたところ当たっちゃって。 「いっ!」 「ご、ごめん」  地味に痛いんだよね、って笑い合った。だからスリッパ履きなよって話しもした。 「つ、次」  小指を手で抑えて、ジンジンしたまま彼の足あとを再びたどる。 「綿ぼこり多いなあ」  彼と別れるか悩んでいた一週間ほどは家のことがほぼ手に付かなかった。「全く自称きれい好きが泣いて呆れるぜ!」とわざとらしく唱えて誤魔化す。  なにを誤魔化しているか、気付きたくないからさらに蓋をする。
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