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ふざけながら足あとの追跡を続けると、トイレやシャワールームまで行くことが出来た。
「トイレ……」
ウォシュレットが後付けされた、洋式トイレはクリーム色。また、彼が降ってくる。
「トイレあいたよ」
「はあい」
慌ただしい朝、ちょこっと遅刻したらイライラしまうのが私のくせで、煽り上手なのが彼だった。
「ちょっと!」
「んー?」
短い髪をワックスで整え、準備万端な彼は吞気にスマホを眺めている。
「下に散るから座ってしてって言ってるよね?」
「あー、わりい」
彼は目線をスマホに落としたまま声だけで応じたから「はあ」と私はわざとため息をついた。
「どーしても立ってするなら便座を下げてから出て。わかった?」
「おー」
またかよ面倒くさ、という気持ちを察しろと言わんばかりに込めてきた。
金切り声を上げたり、物を投げたりはしたくない。だけどイライラはするわけで。バタン、と大きめに音を立ててドアを閉めた。用を足して出たら彼はとっくに出勤していて、コーヒーを飲んだであろうカップはテーブルに置きっぱなしだった。
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