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古き良き人の足
細い足、太い足。どちらが良いと聞かれたら細い足に軍配が上がるだろう。太いと醜い。細いと美しい。そんな価値観しかない時代もあった。
世の中は空前の『My足あと』ブーム。人の足なんて時代遅れ。今は自分だけの足を作り、雪や砂浜などに足あとを残すのが最新のトレンドなのだ。
技術の発達で人々は娯楽に溺れていた。長年放置されてきた人体改造にもようやく着手され、手始めにと開発されたのが足を作り変える技術だ。費用も五千円前後と手を出しやすいのも魅力だ。
まずはブームの火付け役としていつの時代も流行の先端を行く女性がこぞって改造手術を受けた。それは自分の子供にも及び、生まれたばかりの我が子に改造手術を施す母親もいたほどだ。最初はさすがに倫理的に問題があると有識者に批判されていたが、いくら批判されても流行の波に乗っている女性にはどこ吹く風。数年経った今ではすっかり当たり前となっている。
女性の間で足の形が話題になっていると男性だって黙っていない。「普通の足はダサい」なんて言われれば屈辱を感じる。それならば誰よりも魅力的な足を作るしかない。彼女とのデートでやりたいこと第一位は『砂浜に二人だけのオリジナルの足あとを残す』だ。人気の形は二人合わせるとハートになる足である。
「あら、あなたの足って素敵ね」
「それってライオンの足? オリジナリティがねーな」
「この前秘密の砂浜が他のカップルに荒らされてたの!」
「まだ砂浜とか遅れてるわね。新雪に足あとをつけて、一瞬のうちに消える儚さを知らないなんてかわいそー」
「見ろよ俺の足! かっこいいだろ!」
こんな会話は日常茶飯事。とにかく皆、自分の足を自慢したくて仕方ないのだ。海外も同様である。最早社会現象などではなく、世界現象にまでなっている。
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