第4話 異次元から来た吸血鬼

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第4話 異次元から来た吸血鬼

ムカデ長老の件もひと段落して、わがままな患者たちの世話を初めてからしばらくすると、この所あまり姿を見せなかった老師(病院長)から呼び出しがあった。僕が委員長室に入ると、そこは、広い草原の状況で、洋風の東屋の中に据えられた、テーブルと椅子に老師とゴスロリ調の服を着た少女が座っていた。 「ほー、わざわざ済まんのう。ここは、こやつの固有空間でのう。この世界でしか生きられんのじゃよ。最も体はとうの昔に無くなっておるがのう。」と老師の要領を得ない説明から始まった。 なんでも、この少女は、既に消滅してしまった、別次元の宇宙にいた吸血鬼で、基本吸血鬼は不死なのだが、体のよりどころとする宇宙自体が消滅してしまったため、命の母体である、生命エネルギー体だけ、此方の世界(統合次元体の世界)にやって来た、と言うか、どうも老師が連れてきたらしいのだ。少女は僕を見ると 「こちらも、ヒューマノイド(二足歩行生物)なの?」 「はい、テラ種のヒューマノイドです。」 「じゃー、あなたの世界には、吸血鬼はいるの?」 「吸血鬼?血を吸うと言う特殊生命体ですか?」 「血を吸うかどうかは、趣味の問題だわね。まあ、他の生命体のエネルギーを吸うような事はするけどね。」 「僕の起源惑星での古い資料の中に、その様な存在がいたらしい事の報告はありますが、今は認識されていませんね。」 「わしも、色々当たっては、いるのじゃが、この世界ではなかなか見つからんのじゃ。」 「つまり、同族をお探しと言う事ですか?」 「そうね、手っ取り早くいえば、恋がしたいの。」 「はあ・・・それは、つまり子孫を残すためとか・・・」 「それが出来れば、有難いけど、もう私の体は、無くなっちゃっているから、私の吸血鬼としての生命体のエネルギーパターンを引き継ぎたいのよ。」 「ソールAIとかじゃダメなんですか?」 「ああ、わしも何度か試したんだが、異次元間の情報は量子結晶中に固定されないらしく、暫くすると崩壊してしまうんじゃよ。」 「はぁ、それなら、遺伝情報からクローンを再生したらどうですか?」 「ふむ、それも試したが、再生したクローンはただのアバターでしかなく、吸血鬼としての能力を持たないのじゃよ。」 「ふーむ、そうすると、元の世界に行って同族の方を連れてくる、と言っても、もうその世界は無いか。」 「まあ、そんな訳で今の所打つ手が無いのじゃが、悪いが、おぬしもこの件について、手が空いた時で良いので調査して貰いたいのじゃよ。まあ、宿題の様なものじゃのう。」 と老師が言った後に、その少女の作る固有空間を案内された。その世界は、あらかた、僕の起源惑星の中世時代と似ていたが、みな穏やかな生活をしていて、争いの様な物はなく その世界の自然と一体となった生活で、ある種のおとぎの国、数ある創作異世界の中の一つような状況だった。そして、最後に見せられたのは、その宇宙が消滅してしまう姿で 完全な無、物もエネルギーも空間も無くなった世界、多分、その次元が初期化されてしまった世界だった。 「ここが、図書館よ。私の情報は全てここにあるから、あなたにも出入りできるコードをあげるわね。」と少女が言うと、膨大な情報流の渦が見てきた。 「まあー、気長に調べて行くことにするでな。」と老師が〆の様な事を言ってから僕らは元の空間に戻った。
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