一歩手前

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一歩手前

お互いの気持ちを打ち明けた あの誕生日の夜以来。 温かい唇が重なる感触は、甘さと深さが混ざり合って テレビから聞こえる 運動会のリレーの歓声も遠く、遠くに感じる。 惜しむように唇が離れて行っても 私にはすぐ目の前にある、大好きな人しか見えなくて、いつの間にか解かれてた繋いだ手。 その手のひらが、そっと私の髪に触れて 目の前の顔がはにかむから 胸がキュンと鳴って ただただ好きだという気持ちだけで手を伸ばし 松下さんの首に腕を回して抱きついた。 松下さんの髪がこの頰に触れた時 力強い両腕が 私を包み込むように抱きしめて 「……オレと……同じ気持ちやと思ってええんかな」 普段よりも小さな声で、だけど私の耳のすぐ側で聞こえた言葉に、そっと少しだけ身体を離して 真っ直ぐに見つめる目に うん、と頷いた。 想いの強さも 今どうしたいのかも きっと私達同じ気持ち。 「……圭一郎さんと同じ気持ち……」 私の"圭一郎さん"呼びに、またはにかんで微笑む。
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