嘘なんてない

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笑いすぎたせいか、目の冴えたままの和輝くんは今度は動物図鑑を持って来て、私に色んな動物の名前や特徴なんかを教えてくれた。 シマウマにも種類があって それが3種類もある事 クジャクがサソリや蛇など毒を持った生き物を食べる事 ゾウは10キロ先の仲間と会話出来る事……。 思わず"そうだったの?"なんて聞き返してしまうような事ばかりで うんうん、と話を聞いていたら だんだんと言葉が減って来て 顔を見たら もうウトウトした感じ。 何分もしないうちに、うつ伏せで図鑑に手を置いたまま、和輝くんは眠ってしまった。 「やっと寝たな。だいぶ頑張ってたけどな」 眠った和輝くんの手をそっと動かして、その下の図鑑を閉じた圭一郎さんは身体を起こして、足元のタオルケットを和輝くんの肩までかけた。 そしてそのまま胡座をかいて座り、私を見るから そんな圭一郎さんにつられるように 私も身体を起こした。 圭一郎さんは髪を弄りながら 「……正直、今、めっちゃオレの中で闘ってる」 「え……?」 「そっちに行きたいオレと、今はダメだって止めるオレ」 ………本当に真っ直ぐな人だな。 嘘なんてつかない、いつだって真っ直ぐ。 だから私も嘘はなく応えたいって思う。 「うん……。私も同じ……気持ち」 だけど、私達の間で眠る和輝くんの存在が、今この状況の私と圭一郎さんが選ぶべき答え それ以上は言わなくても伝わってる。 「……今日は大人しく寝るか」 そう微笑む圭一郎さんに頷けば 「せやけど!次は大人しく寝るとかあらへんから」 そんな言葉も圭一郎さんらしくて 電気が消えた後 ほんのり残るドキドキの中、目を閉じた。 その夜 私は 不思議な……不思議な夢を見た。
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