待ちぶせ

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待ちぶせ

✻Keiichiro✻ 結局なんやかんや説得される感じで、義父側の提案とやらに同意させられ、1回目の調停は終了。 向こうには弁護士がついてて、オレは不利過ぎる状況。 電車に揺られながら まだ日にちの決まっていない 和輝がいない一週間の事ばかりを考える。 一日だって離れた事がないのに それがいきなり一週間。 和輝は泣くだろうな。 ………いや オレはきっと泣いて欲しいんやな。 泣いて泣いて 帰りたいと言って欲しい それが本音。 4歳の子の意志はあまり考慮されないと聞かされたけど、和輝を手放さないで済む方法が、オレにはそれしか思い浮かばない。 最寄り駅に着いて、いつものようにホームから階段を上がり改札を抜けたら この目にすぐ飛び込んで来た オレを見つけて、笑って手を振る遥。 何も約束なんかしてないけど 複雑な気持ちのオレを、こうして待っててくれるさり気ない優しさに、一気に心が穏やかになる。 「どうしたん?」 嬉しいくせに そんなふうに聞いてみた。 「一緒に帰りたいなぁって……。待ちぶせしちゃった」 ペロっと少し舌を出して笑う明るさに 「待ち伏せ大歓迎」 オレも自然に笑ってる。
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