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✻Keiichiro✻
どちらからともなく歩き出し
いつもの帰り道を歩く。
まだまだ明るい夕方過ぎの夏の空。
この時間に良く会う、大きなレトリバーを散歩させてる人とすれ違い
名前も知らないけれど、2人で軽く会釈。
「調停の話……してもええかな」
2人きりの時に話しておきたいと切り出したら、遥はオレを見て小さく頷いた。
「………和輝を一週間、向こうの家に預ける事になったんよ」
「え……一週間………」
想像して無かった事に、驚いた表情でオレを見る。
「………めっちゃ迷ったんやけど……。
オレが今、ただ向こうの事を突っぱねても何も変わらんと思ってな。
……なんて
正直、無理やり自分にそう言い聞かせてる」
ちょっと苦笑いしたら
数歩歩いてから、遥の両手がそっとオレの左腕に掴まるように回り
そのままゆっくりと歩く。
「なんでも聞くから……。
圭一郎さんの思ってる事、私には隠さないでね」
オレよりも小さいくせに
なんだろう
何よりも頼もしく感じるなんて。
この世界中でたったひとつ
オレが唯一
気を張らないで居られる場所はここ
君の隣なんやな。
さっき電車の中で悶々と考えてた
和輝には泣いて泣いて、ここに帰りたいと言って欲しい気持ちをこぼしたら
君は何度も何度も頷いた。
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