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圭一郎さんの姿を探して
キョロキョロしながら歩く歩道。
スタバ前
……待ち合わせだろう人は何人かいるけれど、圭一郎さんの姿は無い。
そんな中
軽く響いたクラクションの音に目を向けたら
車道脇に停まってる黒のSUV車の運転席に圭一郎さんが見えて、フロントガラスの向こうから私に向かって手を上げる。
車で来るなんて聞いてなくって、驚きながらもそこへと歩くと、助手席側の窓が開いて
「めっちゃ探してたな」
笑う圭一郎さん。
「だって、車で来るって知らなかったもん」
キョロキョロ探してた自分をずっと見られてたんだと思ったら、めちゃくちゃ恥ずかしくなった。
そんな私を見て、圭一郎さんはまた更に笑う。
「ごめん、ごめん。車でって言わんかったな」
そう言いながら身体を傾けて
助手席のドアを開け
「とりあえず乗んなよ。メシ食いに行こう」
乗り込んだ車は、二人きりの空間。
一緒にいる時間は多いけれど、二人きりなんてなかなか無くて、私を“お姉ちゃん”と呼ぶ事も無い特別な時間。
「どこも混んでんなぁ……」
通りにあるレストランなんかは、軒並み駐車場待ちの列が出来てる土曜のお昼。
信号で止まると
圭一郎さんはハンドルに腕を組んで
んー、と唸りながら何か考えてるような顔。
そして私の方に向き
「ラーメンとかでもええかなぁ?
オレが昼メシに良く行く店なんやけど、オフィス街にあるからこの辺よりは混んでないと思うんよ」
「そのお店行ってみたい」
「よっしゃ、じゃ決まり!」
右折の車線へと移動して、車は走り出す。
車内のBGMはFMラジオ。
「……今日、なんかいつもと感じ違う気がするんやけど……オレの勘違いなんかな」
流れる曲に合わせて鼻歌を歌ってた圭一郎さんが、前を見たままそう言った。
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