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「今日は何する?」
他のオーダー分のラーメンの器をカウンターに載せながら、店長さんが圭一郎さんに聞くと
「いつもの2つ」
そう答えた後、ちょっと身体を寄せて
「絶対美味い、オレのおススメやから」
と、私に耳打ち。
そのラーメン屋さんの味を知るには、そこに通う常連の人のお勧めを食べる事だと
いつだったか聞いた記憶と
でも何より、圭一郎さんの好きなものを一緒に食べる、それが幸せ。
「はい、遥ちゃんどうぞ」
奥さんがお水を私の前に置いた。
外で挨拶した時に言った名前を呼ばれ、だけど不思議と違和感はゼロ。
この親しみ易さは、ちょっと圭一郎さんと似てる。
「ありがとうございます」
お礼を言いながらも
出て来たお水は私の分だけで
圭一郎さんの顔を見たら、その顔は口をへの字に曲げながら笑ってて。
「遥ちゃん、うちはね、常連さんになると厳しくなるの。
水はセルフ当たり前。ね、圭ちゃん」
奥さんの言葉に笑いながら
「今日はついでで出してくれたってええのに。
ホンマ、厳しいわ」
イスから腰を上げて、店の隅にあるウォーターセーバーへと歩いて行く背中。
「遥ちゃんも次はセルフね」
奥さんは笑って言った。
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