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圭一郎さんは、もう残り僅かのラーメンをすすり
コップの水も飲み干し
「せやから今日、一緒に来たんやないですか」
そんなセリフの後に
“あー、あちぃ”と呟いて、手でパタパタと仰ぐジェスチャー。
その額には汗が滲んでる。
「汗かいてんの、圭ちゃんだけだけど」
奥さんがクスクス笑いながら
はい、と新しいおしぼりを差し出す。
「は?え?暑いよなぁ?………」
そう言って私を見るけれど
元々、顔にあまり汗をかかない事もあって
いつも通りな顔の私に、瞬きの増える圭一郎さん。
「……ごめん、暑くは……ないかも」
遠慮がちに言ったら、ドッと笑いが起きた。
そんな笑いが収まった後
「なんやかんや色々あって忙しないし、気が滅入る時もあるんですけどね。
……彼女のおかげですわ、こうやって笑えるのも」
思わぬ圭一郎さんの言葉に
私は……嬉しくて嬉しくて
泣きたい位嬉しくて
でもここは泣く場面じゃないと、グッと唇を噛み締める。
本当ならひやかしの言葉が飛び交いそうなのに、店長さんも奥さんもひやかしもせずに、圭一郎さんの言葉に頷いて
「なーんか良い感じだね。ねぇ、圭ちゃん」
カウンターの向こうからの、店長さんのそんな一言に
「オレもそう思いますわ」
笑顔の圭一郎さん。
あなたを囲む人達はあたたかい。
それは
あなたがそういう人だから
──そう思うの。
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