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ママ?
「あの……。
今日隣に越して来ました三上と言います。
日曜なのに突然伺ってごめんなさい」
玄関にチラっと見えた小さな靴に
小さい子供のいる家族なんだと思った。
日曜の家族水入らずの時間に
邪魔をしちゃったな、と後悔。
「あー、お隣さんなんや!
オレは松下です。
あ、ちょっと待ってな」
私の後悔も気にしてない様子で
関西弁のフレンドリーな雰囲気の松下さんは、部屋の方に向かって“カズキ”と名前を叫んだ。
奥のリビングの方から
ヒョコっと顔を見せた小さな男の子。
私を見つけると
裸足で廊下を走り
そのままの勢いで玄関を下りて
私の足にぎゅっと抱きついた。
「ママ!」
──え?
人生初、ママと呼ばれた私。
結婚経験も
もちろん出産経験もないのに
全部飛び越した。
「……コラ!
お姉さんに失礼やろ!
それに、ママはもうおらんって」
グイッと男の子の腕を引っ張るけれど
男の子は力一杯私にくっついたまま。
"ママはもうおらん"
今、そう言ったよね……?
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