光がいうには

1/2
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
「間もなく生まれるよ」 真っ白な空間だった。姿形のない、ただの光がそう言った。 そもそもまだ僕もやっと形ができ始めたところなんだけれど。 わかったのは、これから形が完成したら僕は1つの命として誕生するということだ。 「これを見てくれ」 突然、白い空間に無数の黒い点が出現した。点はずっと先の方に続いている。光が言うにはこれは足跡というらしい。 「これから君はとある星に既存する、何かしらの生き物として生まれる。全身に毛が生えた物や全身がツルツルな物、その他針が生えた物やヌルヌルした物なんかもある」 足跡、の形は様々だった。点がいくつもあったり細長かったり、三角だったり。同じのが2つとない。 中には先に続いていない足跡がぽつんとあった。なんだか細く絡み合ってごちゃごちゃとしている。 「ああ、それは植物の根の跡だ。あいつらは歩かないから先には続かない。死ぬまでずっと同じところにいるのが好きだから」 光はそう説明した。 どうやら、僕にはこの足跡の中から1個を選ぶ権利があるようだ。 選んだら、その姿形で誕生することができる。 どれにしようか迷う。 足跡だけじゃどんな生き物になるのか想像もつかない。 僕は点が5つあって、その下に少し曲がった形の足跡を選んだ。 「人間を選ぶか」 選んだ途端、他の足跡はなくなり、白い空間には人間の足跡だらけになった。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!