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「間もなく生まれるよ」
真っ白な空間だった。姿形のない、ただの光がそう言った。
そもそもまだ僕もやっと形ができ始めたところなんだけれど。
わかったのは、これから形が完成したら僕は1つの命として誕生するということだ。
「これを見てくれ」
突然、白い空間に無数の黒い点が出現した。点はずっと先の方に続いている。光が言うにはこれは足跡というらしい。
「これから君はとある星に既存する、何かしらの生き物として生まれる。全身に毛が生えた物や全身がツルツルな物、その他針が生えた物やヌルヌルした物なんかもある」
足跡、の形は様々だった。点がいくつもあったり細長かったり、三角だったり。同じのが2つとない。
中には先に続いていない足跡がぽつんとあった。なんだか細く絡み合ってごちゃごちゃとしている。
「ああ、それは植物の根の跡だ。あいつらは歩かないから先には続かない。死ぬまでずっと同じところにいるのが好きだから」
光はそう説明した。
どうやら、僕にはこの足跡の中から1個を選ぶ権利があるようだ。
選んだら、その姿形で誕生することができる。
どれにしようか迷う。
足跡だけじゃどんな生き物になるのか想像もつかない。
僕は点が5つあって、その下に少し曲がった形の足跡を選んだ。
「人間を選ぶか」
選んだ途端、他の足跡はなくなり、白い空間には人間の足跡だらけになった。
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