光がいうには

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「また大変な生き物を選択したな。先に行ってみようか」 光にそう言われて、僕は足跡の続く先の方へ進んでいく。 白い空間は無限に広がっているようだ。人間の足跡はびっしりと空間を埋め尽くす。 途中で途絶えているものもあれば、消えかけているものがあった。 光が言うには、途中で消えているのは寿命というのを迎える前に命が消えた人間の足跡で、消えかけているのは命が消えかけていることの表れ。 つまりこの無数の人間の足跡は、これから僕が生まれ落ちる世界にいる人間のものなのだ。 命に限りがあることを知った。 せっかく生まれるのにもったいないなとも思った。 「君はね、生き物で1番大変な人間を選択した。誕生して生きていけばたくさん選択をしていかなくちゃいけない。面倒くさがって先に生まれた人間の足跡を、単純に踏んで辿っていくようなつまらない人生にならないことを祈る」 僕の形はいつの間にか完成されていた。白い空間を踏みつける。僕の、僕だけの足跡ができた。 「どうだい、楽しいだろう。他の足跡と重なっちゃあ自分のが見えなくてつまらないぞ。白い所を進んでいけ」 僕はできたての頭を光に向かって下げた後、何もかもを忘れて産声をあげた。
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