好きだった人から来た年賀状

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あけましておめでとうございます。 今年もよろしくお願いします。 たった2行そう書かれた年賀状が 案外嬉しかったりするものだ。 同期や良くしてくれる上司、慕ってくれている後輩から届く年賀状が俺の1年のはじまりの合図だった。 時に大学・高校時代の友達から届くこともあって、毎年密かに楽しみにしている。 宛名に驚いたり、内容に泣かされたり、一通一通じっくり見て、引き出しに入れていく。 新婚夫婦で幸せそうに写っている写真や、子供が生まれた報告。 もう、俺もそんな歳か。 友人がどんどん結婚していく。 一緒にやんちゃしていた奴も、気づけばいい人を見つけて優しそうな顔になっていたり。結婚式に呼ばれることも増えた。 それでも自分は未だ独り身でいる。 結婚願望はないわけじゃない。 ただ、それが出来ないだけ。 俺が好きなのは、同性だった。 高校で同じクラスだった人。 告白はしてない。 ただ毎年律儀に年賀状が送られてくる。 その度に忘れることが出来ず、彼から来た年賀状をじっと読んでしまう。 あまり字の綺麗な奴じゃなかった。 それでも一生懸命書いたであろう宛名とメッセージを見るのが好きだ。今年はこう書いてあった。 「新年も幸せに過ごせよ!」 俺じゃなくてお前にかける言葉だよそれは。 この間、彼にも好きな人が出来たらしい。 見せられた写真には、 穏やかで、大人しい感じの人が映っていた。 あの時見たあいつの笑顔は今までで1番輝いていた。 俺には、作れなかったものだ。 この人にも年賀状を書いたのだろうか。 その時は自分宛に来たものよりもっと時間をかけてきっちり宛名を書いたのだろうか。じっくり考えて空欄が埋まるほど、メッセージを書いたのだろうか。 そんなことを考えてしまう。 気づけば年賀状が、一点だけ滲んでいた。 じきに32になる。 涙もろくなった。 それと同時に、人の幸せを祝えるようになった。 好きな人に、幸せになって欲しい、と。
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