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「佳織は、オレにはもったいないくらい可愛い人だって思ってる。だけど、他のやつには渡したくないっても思ってるから。だから、誰にも渡さない」
「うん……私も、春樹くんの傍から離れないよ。ずっと一緒にいたい」
お互いの手を握りながら、私たちは小川の水面に反射する夕日を眺めていた。それも、徐々に陰りを増していき、段々と消えていってしまう。
もうそろそろ花火大会が始まりそうな時間だったけれど、私たちはなんとなく盛り上がっているお祭りの会場に戻る気にはなれずに、しばらくベンチに座ったままだった。
「佳織……キスして良い?」
「えっ、ここで?」
「うん、ここで」
「でっ、でも……」
「……嫌?」
「……そういうこと聞くの、反則」
辺りをきょろきょろを見渡して、周りに誰もいないことを確認する。どうやら、広場で行われているイベントにみんなが集まっているようだった。そこから少し離れたところにある小川沿いには、いつの間にか人影は誰も残っていなかった。
春樹くんは、時々そうやって私に答えが分かり切っている質問をしてくる。私が断れないってことを知っている癖に、そうやってワザと聞いてくる。そんな私の反応を見て楽しんでいるのだろうけれど、それでも不思議と春樹くんを怒る気にはなれなかった。
だって、そういうときの春樹くんって、すごく私のことを想ってくれているような気がしていたから。
「佳織……」
「んっ、春樹くん……」
春樹くんの手がそっと私の頬に触れる。そして、春樹くんと私の距離が次第に近づいていき、私の唇は春樹くんの唇で塞がれる。
「んっ、んんっ……」
「っ……」
最初は優しいキスだったのに、どちらからともなく激しさを増していく。そして、最後にはお互いの下を絡ませ合う深いキスになってしまっていた。
春樹くんの舌が私の中に入って来る度に、私の体の中に電気が走ったかのような感覚が入り込んでくる。それはとても心地よくて、頭がぼーっとしてフワフワとしてくるようだった。
「あっ、ふあぁ……」
「っ、佳織……その顔、めちゃくちゃ可愛いからやめて」
「じゃあ……もう1回して?」
「……どうなっても知らないからな」
いつの間にか上空に花火が上がっていたのにも気が付かずに、私と春樹くんは何回も深いキスを交わしていた。
そして、私たちが離れたときには、夜空に輝く無数の星たちが打ち上げ花火に照らされて、より一層輝いていた。
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