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「佳織、本当にごめん。さっきは悪ふざけしすぎた」
「知らないっ」
春樹くんの思うがままにされてしまった後、私たちは再びお祭りが開かれている会場へと戻って来ていた。
しかし、そこに戻ってきた私の機嫌はなかなかに悪かった。原因はもちろん、手を繋いで隣を歩いている春樹くんにあったのだけれど。
「でも、さっきの佳織、すごく可愛かった。感じている顔とか、見てるこっちが興奮した」
「それ、全然反省してないよね? 春樹くんがエッチなことしたかっただけじゃないの? もう、春樹くんなんて知らない!」
人波をかき分けるように、私はスタスタと商店街を歩いていく。私に手を握られている春樹くんも、私の早歩きのスピードに合わせて一緒についてきてくれていた。
「そんなこと言って、さっきからずっとオレの手を握ってるのはどうして?」
「もう、そんなことはどうでも良いでしょ? だって、一人で歩いていたら迷子になるかもしれないもん」
「じゃあ、ちゃんとオレの方向いてよ」
「イヤ! それだけは絶対にイヤ!」
日が少しずつ西に傾き、お祭りの会場は徐々に夕日に照らされていく。そんな中、私は行く当てもなく春樹くんを連れ回していた。
さっきまであんな恥ずかしいことをされていたのに、春樹くんの顔を直視出るわけがなかった。下着や腋は未だにスースーしているし、両方の胸にはまだ春樹くんの手の感触が残っているような気がして、油断したらまたそういう気分になってしまいそうだった。今までそういうことには興味がなかったはずなのに、自分の中にイヤらしい感情が渦巻いていることを、春樹くんには察知させたくなかった。
「でも、オレが佳織のこと好きだってことは分かったでしょ? あんなこと、佳織にしか出来ない」
「それは分かったけど……恥ずかしかったんだからね」
「……ごめん」
頬を膨らませながら、私はようやく春樹くんの顔を見ることが出来た。それでも、さっきの興奮している春樹くんの表情を思い出しそうになってしまって、自分がこんなにエッチな女の子だったということを思い知らされてしまった。
いつも美紅ちゃんから聞いていたことがあったけれど、美紅ちゃんと栗原くんは既にそういう経験を何度かしているようだった。きっと、栗原くんしか知らない美紅ちゃんがたくさんあるのだろう。そう思うと、私しか知らない春樹くんもいくつかはあるのだろうか。
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