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2人は森を散歩していて小さな洞窟に差し掛かった時、小人に会った。
小人は洞窟の前でよくわからないものを広げていた。
「何突っ立って何見てんだ? あっちに行け」
「何をしてるの?」
「これは何?」
「うるせぇ! どっかいけ!」
小人はいつもの通り悪態を付きながら手を振りかざし、2人を追い散らそうとした。その時遠くで大きな鳴き声が響き、どすどすと地面を駆ける音がして熊が現れた。
「ようやく見つけたぞ。その金銀財宝も俺のものだ。すべてを返してもらう」
「待て、待ってくれ。お前もわかってるんだろ? 誰が依頼したか」
熊は拳を振り上げる。
「待て、待ってくれ。俺を殺したらこいつらの呪いも解ける。お前らはいいのか、熊の呪いが解けたらお前らは元の姿にもどっちまう。そうしたら熊はお前らの前に姿を現すことはない」
「そうなの?」
「そうなの?」
「……」
「こいつはこの国の帝の継嗣だ。だが人を人とも思わず気に食わなければ殺し欲しいものを奪った。だからこいつの父親の帝は俺に頼んで熊の姿にして宮から追い出した」
「俺は熊の姿で彷徨って散々反省したんだ。もう以前の俺じゃない、同じようなことは決してしない」
「どうだかな? 今は力がないだけで呪いが解ければすぐに元に戻るさ。ニンゲンってのはそんな簡単にかわらねぇ」
「熊は優しいよ」
「熊は楽しいよ」
「それは今の熊に優しいのがお前らだけだからだよ。それから今の姿が熊だからだ。熊だから細けェことは理解できないんだよ。ニンゲンってのは複雑だからな。この熊はもともとニンゲンだからニンゲンに戻ればすぐにいろいろ思い出してゲス野郎に元どおりさ」
「そうなの?」
「そうなの?」
熊は2人の視線を避けるように狼狽える。
その巨大な拳はすでに力なく下されていた。
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