白梅と紅梅(裏) 【意見募】もっと表現追加したほうがいい場合は修正します!

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「俺は……」 「そんな事しないって言いきれんのか? できねえだろ。実際やってたんだからな」 「でも熊は戻りたいんでしょう?」 「戻ってはだめなの?」 「お前らも今のままこいつと暮らした方が幸せだぞ。お前ら熊が好きなんだろ? 今の人間の姿のほうが熊の好みだ」 「そうなの?」 「そうなの?」 「そんなことは……前の姿でも」 熊は視線を左右に彷徨わせた。 「な、元に戻ったらお前らに会いに来たりはしねぇよ。なにせ継嗣に戻れば綺麗な人間の女が周りにあふれてるからな」 「そんなことは……」 「熊よ、お前今の生活で不満か? こいつら2人はずっとお前の側にいるぞ。この姿のままでな。お前はニンゲンに戻ったらこいつらのことなんてすぐ忘れるんだろ? 会いに来るっていうのか?」 「それは……」 「お前反省したって言ったろ? 何のために人間に戻るんだ? 地位や金や宝や女が欲しいのか? 反省してないだろ」 「……わからない。わからなくなった。だがお前は逃さない」 熊は洞窟の前で陣取り、なにやら考え始めた。 洞窟は湿った岩肌が剥き出しで、その冷たさが熊の毛皮を湿らせた。 「熊は人間に戻りたいのじゃないの?」 「熊は熊の姿が嫌なのじゃないの?」 「わからない。わからなくなった。俺は熊にされたときに人間に戻りたいと思った。でもなんで戻りたいのかわからなくなった」 「戻ってなにかやりたいことがあったのではないの?」 「戻らなかったら何か困ることがあるの?」 「よくわからない、なんであんなものが欲しかったのかよくわからない。戻らなくても困らないかもしれない、困らないんだろうな、俺も、周りも」 「熊は人間のほうが幸せなの?」 「それとも熊のほうが幸せなの?」 「……わからない」
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