幸せとは何か。(十一)

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幸せとは何か。(十一)

 もういくつ目だろう。一行は、未来の王国にたどり着いた。  空色の宮殿。そこにはまだ生まれない子供たちがいた。彼らはまだ、涙の存在すら知らないものたち。  ここを離れて地上へ向かうときは、「お土産」を持っていく決まりがあり、多くの子供たちが成長後に発明する薬や機会を見せてくれる。  これだけならさぞ希望に満ちた場所に思えるが、それは一面に過ぎなかった。  「お土産」の中に病気や罪も含まれているのだから。  だけど、良いものだけを持っていくことはできない。何かを用意してこなければならないのだという。  チルチルはつい「生きるかいがないじゃないか」と言うが、時と運命には逆らえないのだ、とみなそれぞれ「お土産」を持って旅立っていく。 「現実的ね」 「まあ、あくまで本の中の話だけど」 「でも、この後、チルチルとミチルは最後、家のベッドで目が覚めるでしょう?」  そこで見つけた青い鳥の羽で、幸せは案外すぐ近くにあるって知る。  最後は有名だった。別れも突然なら、旅の終わりも突然。  隣の彼も頷き、「大体そんな感じだね」と言う。 「順を追ってる、けどこんな上手くいくものかしら」  私の疑問に彼は少し俯く。 「……そうだね。二人は帰ってきたとき、家族がいたから。その幸せを知ることができたんじゃないかな」  僕も正直出来すぎてる気がするけどね、と苦笑するが、その顔は少しだけすっきりとしている気がした。  彼はもしかして、自分の幸せを知っているのだろうか。 「……私の幸せも、すぐそばにあるのかな」  気づけば口から漏れていた言葉。  彼は何も答えず、最後のページを閉じる。
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