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幸せとは何か。(七)
メーテルリンクの青い鳥。
これはチルチルとミチルの兄妹の冒険旅行の話だ。
貧しい木こりの家の子供であるチルチル(兄)とミチル(妹)は、クリスマスイブ、お向かいの家の派手なパーティーが眩しく見えていた。
そこに現れる魔女は、二人に本当の姿が見えていない、と言い、魔法の帽子をチルチルとミチルに渡した。
一変する家の中から飛び出してきた精霊たちとペット二匹を連れて、二人は幸せの青い鳥を探しに旅立つ。
「――昔ながらの絵本だわ」
最初に思ったのがそれだった。
私はアンデルセンの人魚姫が好きだ。家に絵本も、ちょっと難しい小説もある。絵本のほうがもちろん好きだけど。
そんな本によく似ていると思った。
「そうかい?」
彼はちょっとだけ首を傾げ、私は頷いて返す。
「精霊は現実にいないし、魔女が突然現れることもないもの」
てっきり彼も、共感してくれるだろう、と思っていたのだが、彼は少し眉を寄せて苦笑する。
「君にはそう見えるんだね」
「おかしいかしら」
今度は私が首を傾げた。
彼はゆっくりと首を横に振る。
「そんなことはないさ。だけど大事なものは、そこにないから」
意味ありげなようでよくわからない言葉に、「ふうん……」とあいまいな返しをする。
彼はまたクスクスとおかしそうに笑った。
「さ、続きを読もう」
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