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幸せとは何か。(八)
チルチルとミチルは最初に思い出の国へとたどり着く。そこで出会うのは、もう亡くなったはずのおばあさんとおじいさん。
故人がいる場所だった。
二人に青い鳥がこの国にいることを教えてもらい、チルチルとミチルは手に入れることに成功する。
ところがその青い鳥は、思い出の国を出た途端に黒い鳥へと変わってしまった。
「つまり、青い鳥ではなかったの?」
私の問いに、彼は「青い鳥だったさ」と答える。
「ならどうして」
「幸せそのものだからだよ」
もっとわからない返しに首を傾げると、彼は笑った。
「思い出すことを忘れちゃいけないって、ことを書いてるんだ。きっとね」
いいながらページをめくる。
次に二人が辿り着いたのは、戦争と病気が溢れる場所。夜の奥方が支配する夜の御殿だった。
ここにはたくさんの秘密が閉じ込められた扉があった。
「幽霊」「病気」「戦争」「陰」「恐れ」「沈黙」など、不気味なものばかり。
ここでも思い出の国と同じように青い鳥を手に入れることができたが、その青い鳥を持ち出したとたん、今度はみなが死んでしまった。
突然怖いものに変わった、と思った。
いきなりみんな死ぬなんて。絵こそないものの、想像してしまう。
「青い鳥を持ち出さなかったら、みんな死ななかったのよね」
つぶやく。彼は隣で絵本を見つめながら、そうだね、と同じようにつぶやいた。
「二人は悪だわ」
「でも、そんなこと知る由もなかっただろうさ」
そう言われてしまうと、返す言葉がなかった。私も同じ状況なら、持ち出してしまっていただろう。
ふと彼はこちらを見た。
「ここまで見て、君はわかった?」
「え?」
よくわからないまま首を傾げる。彼は、じっとこちらを見ていたが、すぐに首を横に降って、苦笑する。
「……いや、なんでもない」
ぱらり、とまたページがめくられ、ふわっと風が立った。
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