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幸せとは何か。(九)
二人は他にも、森、墓地と訪れたが、青い鳥は見つからず、連れてくることも敵わなかった。
次に訪れたのは、幸福の花園。
ここは「幸福」たちが暮らす魔法の花園で、最初に出会ったのは「一番ふとりかえった幸福」だった。仲間には「お金持ちである幸福」「虚栄に満ちた幸福」
「ひもじくないのに食べる幸福」など、まるで幸福に思えないものばかり。
「これ、幸福とは言わないわよね」
まだ途中だったが、つい言ってしまった。
「大人の言う幸福はこれよね。大人はそんなつまんない世界に生きているのかしら」
私の言葉に、黙っていた彼が徐に口を開いた。「そうとは限らない」と。
「目に見える幸福の形はこれなんだよ」
「え?」
「幸福は目に見えないだろ? それは君もわかってる。だけどそれだと不安なのさ。大人になると、いろんなことに押し潰されそうになるからね」
「だから、目に見える形にするってこと?」
「そう。だからこれも幸福なんだよ」
やっぱりよくわからない、とは思った。だけど隣の彼だって自分と同じくらいなのに、大人のことをよくわかっている気がした。
それがなんだか、悔しいような、悲しいような気がして、俯く。
幸福の話の続きが、そこにある。
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