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起
借金がある。四桁ほどの。
もちろんそれが四桁で終わったり単位が円でなければなんも問題がないのだが、その後ろにはしっかり「万円」の文字がつく。
浪人生になってからハマったパチンコのせいだった。ストレスの発散と暇つぶしに始めたものだが、気がつけば金を注ぎ込んでいた。消費者金融からお金を借り出してからは、本当にあっという間だった。気がつけばとんでもない額になっていた。
30を越し、定職にもついていない私がそんな額を返すことは到底不可能だ。こうなる前に手を打っておくべきだったと何度も思うのだが、もう遅い。
私の周りには常に借金取りが付き纏うようになり、彼らの目を気にして職安にもいけず、利息は増えていくばかり。
そんな時、耳にした噂が、愛員タウンという街の存在だった。
なんでもここの住む人たちはみんな、だんだんと「かちやすくなる」という。その意味がよくわからないが、噂ではそこに住む人はみな、大金を得やすくなると言うなんとも眉唾物の話だった。
ネットで調べてもそんな名前の場所は出てこず、噂自体も検索に引っかからない。
私はその街の存在さえ信じていなかった。
『愛員タウンに引っ越しませんか?』
ドアポストに入っていたそのチラシを見るまでは。
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