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「あ……、あの〜……。俺は食べても美味しくないですよ……??」
狼を見上げながらそう言った。
冷や汗が止まらず、顔がひきつってしまう。しかし、今はそんなことを気にしている暇ではない。
目の前の狼は今にも俺を1口で口の中に入れようとしているだろう。
今は恐らく「いただきまぁす」と口にしてナイフを手に構えている状態だ。
「えっ………と………。ご……、ごめんなさぁぁぁい!!!!」
意味もなく謝り、俺は狼とは逆方向に全力疾走した。
すると後ろを振り向かなくともわかるくらい、大きな足音がこちらへと迫っている。
後ろを振り向く余裕がなく全力で走っていると、お決まりな事態が起こった。
「あっ!!! って!!!!」
大きな石に躓き、勢いよく顔面スライディングをしてしまった。ものすごく痛い。
「いたた……。くそ、なんでこんなこと………に……」
その場から立ち上がり顔を抑えていると、頭から水をかけられた。
もちろんそれはただの水ではなく、先程の狼が垂らしたヨダレだった。
汚いのと恐怖とでその場から動けなかった俺は、狼を見上げることしか出来なかった。
「あ……」
「ガウッ!!!!!」
狼は大きな口を開き、鋭く白い牙で俺を食べようとしていた。
(あ………、さようなら俺の青春……)
諦めた俺は涙を流しその場から倒れた。
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