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ポエマー金橋
「フラれちまった。」
ファミレスで開口一番、金橋は言った。
奈良坂は軽く吹いた。
「お前、とっておきのプレゼントさえ受け取ってもらえたら、それで本望だって言ってたじゃねえか。なのに、フラれたらやっぱりショックか?」
金橋は唇を噛んでから言った。
「そのプレゼントをフラれたんだ。」
奈良坂はちょっと目線を上げて金橋を見た。
「珍しい女だな。気に入らなくても受け取って、金に替えるのが普通じゃね? お前、何を買って渡したんだ?」
「……自作のポエム。」
奈良坂は爆笑した。
「ギャグか?! お前それ、ネタ作りだろ?!」
「そんなんじゃない! 真剣に書いたポエムだ!」
顔を真っ赤にして怒った金橋に、奈良坂もからかうのをやめて言った。
「お前な。女じゃあるまいし、男の自作ポエムなんて、付き合いの長い女に見せるもんだぜ。相手も驚いたろうなー。いきなりかよ!みたいな。」
「……お人形さんみたいな子だったから、そんなプレゼントが似合うと思ったんだ。」
「そりゃお前の勝手だ。」
「だよな~~~~~~~」
コーヒーのカップの縁を噛んで、金橋は涙がこぼれそうな目をつむった。親友を前にしてなんだが、コーヒーのアロマのみに癒される、ポエマー金橋であった。
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