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おれおれスリ犯
少年タモツがフードコートでちゃんぽん麺を受け取って席に着こうとしたとき、誰かがすごい勢いで走り抜けた。
すれ違うとき、そいつにぶつかられたタモツは、ちゃんぽん麺をトレーごと落としてしまった。
「てめえ!」
そいつはすぐ先のファーストフード店の人垣を無理矢理通り抜けようとしていた。
人垣の外側から先回りしたタモツは、そいつが出てきたところで脚で壁ドンし、行く手を阻んだ。そして怒鳴りつけた。
「俺のちゃんぽん代と割れた食器代と汚れたコートのクリーニング代、払え!」
「は、はい!」
そいつは手に持っていたバッグを開けようとした。すると、人垣をかき分けて出てきた女性が、
「それ私のバッグよ!」
と叫んで取り上げた。
「え、で、でも、他に払う手がない……」
タモツは言った。
「警察、行こか。」
その時だった。
「ちょっと、ちょっと待って。あんた幸也かい? 幸也だろう?!」
1人のおばあさんが来て、そいつの顔を見た。
そいつの顔には、え?誰?このばあちゃん──と書いてあった。
だが、すぐさま言った。
「そうだよ、おれだよ! ばあちゃん!」
タモツは思わずツッコんだ。
「そんなわけあるか!!」
結局そいつはスリとオレオレ詐欺、2つの罪で御用となった。
いずれも未遂ということもあり、孫によく似た青年を見捨てられないというばあちゃんの泣き落としのおかげもあって、警官からのお説教だけで済んだ。
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