6人が本棚に入れています
本棚に追加
/101ページ
リラックス時?
「う~ん……」
旅先で、彼女がつらそうな顔をし始めた。
「どした?」
「うん……。私、はじめて来る場所って、緊張しちゃって、お腹が張るんだよね。」
「はっはっは、なら、晩の温泉で出るんじゃね? ポコポコポコ~って。」
「もう!」
お腹はつらそうだが、機嫌までわるいわけではないらしい。屁くらい、なんかの拍子に出るだろうと、俺は気に留めなかった。
さて、その晩のことだ。
それぞれ温泉を楽しみ、部屋で合流してご馳走を食い、就寝となった。
恋人と同じ部屋だからって、初日から手を出す気はない。そんなのはあさましい。
「じゃあ、電気消すね。」
「ああ、おやすみ。」
「おやすみなさい。」
昼間けっこう歩いたからか、彼女はすぐに寝息を立て始めた。
疲れたからといって、こんなにすぐに眠ってしまうなんて、子供みたいだな。俺はひそかに微笑んだ。
その時だった。
ブッふうぅう~!!
何かの圧でも抜けたかのような音がして、俺は事故かと慌てて明かりを点けた。
そして室内を見回したとき、彼女が「うーん…」と寝返りを打った。その顔は、ほころんでいた。
「………あ~。そういうことね。」
リラックスした彼女の腹から圧が抜けたらしい。
「こいつぅ。」
なぜか愛しさを感じた俺は、ぐっすり眠っている彼女の額を人差し指ではじく真似だけして、明かりを消した。
リラックスして眠る彼女とは対照的に、眠れなくなってしまった俺だった。
最初のコメントを投稿しよう!