冬の猫屋敷・節電

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冬の猫屋敷・節電

「ただいまー……あれ?」  大学生の珠美が帰省すると、いつもどっと集まってくる猫たちの気配がなかった。 「タマー? チャー? ひぃ? 猫蔵? はる? ぽんスカ? こがね? サラ? クロ? かーさん? ぱく助?」  名前を呼びながら家のなかを探してみたが、物音ひとつしない。 「おかーさぁん、猫たちはー?」  訊きながら居間にいくと、母親はコタツから頭だけ出して眠っていた。 「寝てるわー。」  とりあえず自分も暖まろうと、珠美はコタツに足を突っ込んだ。 「うひゃっ!? なに、あんたたち!」  珠美はコタツ布団をめくった。  11匹の猫たちが詰まっている中に、母親の足が見えた。  コタツの電源は、入っていなかった。
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