CODE2 「ハンター」

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 炎の魔法に特化しているイゴールは、これら全てに様々な炎系の魔法を封じてあり、詠唱が間に合わない戦闘時に使用するため持ち出して来たものでもある。つまり「対魔法使い戦」があると想定して「協会」は動いている。 「「マスター」……一体何者だ? その男がマナの歪みを生み出す元凶か?」  イゴールの姿は暗闇の中へ溶け入るように消えて行く。  炎操る「狩人」の目は、次なる獲物を探し求める。      ◇  千葉県某所の河川敷。時刻は十六時半を回り、空は暗くなってきている。  この日から大和にとって、苦難とも言える生活が始まった。 「ちょっと~……世希さ~ん? こんなことやってて本当に釣れるんですか?」  対価を支払い終えた大和は、そのまま河原で<ストライク・シャフト>の練習をするよう、世希から言い渡されていた。  十五メートルほど離れた位置に、的代わりに数本の空き缶が並んでいる。  大和の背後――少し離れた位置にある橋下に、腕組みした世希が立ってこちらを監視していた。 「奴の情報通りなら、あの外套男は「魔法」の反応を探知して動いている。それならここで透が魔法を使い続けていれば、いずれ相手が釣れる可能性は高い」  世希の表情は努めて真剣そのものだ。  彼女の発案した作戦は、大和に魔法を使用させることで「囮」にし、件の魔法使いである外套男を誘い出す作戦である。  作戦の通り、周辺には特捜二課の面々が、完全武装した状態で隠れ待機していた。大和の身に万が一危険が迫った際、全方位から四人がサポートとして動く手筈になっている。 「その外套男が現れなかったらどうするんスか?」 「即日相手が釣れるとは思っていない。一時間継続して何も無ければ解散だ」  世希はそう言うが、大和は頭の中で全く異なる思案を巡らせ、  ……最近北東部で外套男が事件起こしたんだから、向こうでやるべきなんじゃ……?  相手が公共の交通機関などを利用しているかは不明だが、仮にこの千葉市近郊に魔法の反応があると探知できても、すぐには戻ってこれないだろう。  渋々といった様子で大和は空き缶に向き直り、<ストライク・シャフト>を発動させる。  本部で射撃訓練をする時とは違い、握り拳で直接缶を殴るイメージで正拳突きを繰り出した。  カァン、と小気味良い音を立て、空き缶の一本が倒れていく。その様子に手応えと満足感を得ながら、大和は世希に対して問いの言葉を作った。 「でも相手は炎を扱う魔法使いですよね。戦闘になったとして、大丈夫なんですか?」  大和にはまだ防御魔法の<ロック・シールド>があるものの、世希を始めとする特捜二課の面々は防魔チョッキなる「協会」謹製の「対魔法使い用装備」しかない。そして、それら「対魔法使い用装備」の実用試験は一度もされていないため、本当に効果があるのかも分からなかった。 「被害が及ばないよう、遭遇時は短期決戦で終わらせるつもりだ。透も有事の際は、躊躇わず魔法を行使しろ」  短期決戦――その言葉を受けて「無弾」事件の時のことを思い出す。  あの時の大和は、相手が相手だったこともあり、躊躇から大勢の犠牲者を出し、また、自分自身もいいように相手の攻撃を許してしまっていた。  今度の相手に対しては、情けや手心を加える必要性が無い。以前のような轍は踏まないだろう。  ……疑問なのは俺の防御魔法が、それだけ強烈な炎の魔法を防げるかってことなんだけど。  防御魔法<ロック・シールド>は、契約した時点で聞かされている情報として、これが下位の防御魔法であることと、ダメージは約二割ほど抜けてくるということ。
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