CODE2 「ハンター」

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 吉田の言通り、ここ毎日一件以上は必ずと言っていいほど、放火に関する報告が入って来るようになった。  ところが犯行時間が夜であることと、事後であることからも分かる通り、外套男の目撃情報は一つも入ってこない。 「千葉県全域の警察署には全て写真を配布して、外套の男を見かけたら即座に連絡を入れるよう手配済みです」  斎藤がそう言ってくるが、それらしい連絡は今のところ入って来る様子が無い。  行方の暗まし方も「無弾」の時とは訳が違うようで、近隣の防犯カメラからもそれらしい姿は確認されていなかった。 「それこそ転移魔法……っていうの? 移動にも魔法使われてたら、いくら何でも追いかけられないしなぁ」  田口がお手上げポーズでそんなことを口走る。  仮にそんな魔法で移動できるのならば、居場所を特定するのは難しい。 「移動に魔法を使っていると仮定したら、逆に葵警部の今回の作戦にも引っかかりやすい、と言えるのでは?」  田口の発言に対し、即座に稗田が言葉を返した。言われてみればそうだな、と大和も納得する。  続いて世希から出てきた言葉は、 「魔法で移動しているなら好都合だが、犯行現場の順番から見てそれは無いだろう。奴は恐らく徒歩だ」  更に彼女は「問題はそこではない」と続ける。 「もしもこれ以降、奴の近場に「魔法使い」が潜んでいたり新たに発生した場合、そちらを優先して行動されてしまう。奴にもみだりに魔法使いをこれ以上産まないよう、釘を刺しに行かなければならないだろう」  つまりまたマギ・メディエイションを訪れる必要がある、ということだ。  ……それってもっと早い段階に釘刺しておくべきだったんじゃ?  反射的に大和はそう考える。仮に世希がマスターに進言して、マスターがそれを受け入れるとも思えなかったが。 「私はこの後マギ・メディエイションへ赴く。透、お前も一緒に来てもらう」  世希から突然発表された言葉に、大和は自らの顔を指差して固まる。 「え……? 俺もッスか?」  大和が疑問形で返す理由。そもそも世希はマスターから名刺を受け取っているため、単身でもマギ・メディエイションを訪れることは可能である。  そうであるにもかかわらず、世希は大和に同伴を強制してきていることが疑問なのだ。 「当然だろう? 私一人で飛び込んで、何かあっても困るからな」  大和は思った。自分が行ったところで何の役にも立たないだろう、と。 「お前たちは引き続き捜査と情報収集に当たってくれ。万が一外套男と遭遇したとしても交戦は避けろ。いいな?」 「「「「了解」」」」  役割分担は決まったようだ。  大和は「またあの辺鄙な場所に出向くのか」と、沈鬱になっていく気持ちを抑え、静かに身支度を整えることにした。  ――世希の車に乗り込み、本部を出た大和は、助手席で頬杖を突きながら、 「今度はどこが入り口なんです? まさかまた君津市とか?」  世希に尋ねると、彼女の口からは「いいや」と否定の言葉が返る。 「昨晩確認したら、都合よく習志野市に変わっていた。偶然なのか奴が気を利かせたのか知らんが、近いに越したことは無い」 「だから急にマギ・メディエイションに行くなんて言い出したんですね」  大和が呟くと、世希も短く「そうだ」と肯定する。  今月に入って二回目の訪問となるが、今回の目的はまず「マスターにこれ以上魔法を斡旋させないよう釘を刺すこと」だ。  マギ・メディエイションとは魔法を斡旋する魔法結社である。言ってみれば組織の営業目的を妨害しようという話だ。マスターがこの提案を素直に聞き入れるとも思えない。
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