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「・・・・パパ・・起きて・・・・ねえ・・パパ・・・・起きてよ、パパ・・」
弱い弱い子どもの懇願する声に気づいた聖子が最初に思ったのは、よかった、わたしじゃない、だった。わたしは女だからパパじゃない。だからもうちょっと休日の朝の惰眠を貪ってもいい。もう一度、心地よい眠りの海に戻ろう。
そして次に気がついたのは臭気。なんだ、これ。ああ、そうだ。これは生物の消化分解機能の最終段階として生み出される、悪臭とともになぜか安心感を誘う、あれだ。特に雑食性の動物特有の、そう、うんちの臭い。
半覚醒状態の、まだアイドリング回転数にも達していない脳がそんなことを考えているあいだも、子どもの声はやまない。
「ねえ・・パパ・・、パパ・・・・起きて・・、起きてよ・・ねえ・・」
泣いてる。子どもがパパを呼んで泣いている。
すべてのスイッチが一瞬にして入った。カチ、っと音がしたみたいに。
何も着けていない上半身を腕立て伏せのようにセミダブルベッドから浮かせて、こんもりと盛りあがった人ひとり分の山を越えた向こうに立つ子どもを見た。
目が合った。
男児。4、5歳。頬に涙の筋がくっきり。
おばちゃんに任せときな、というつもりで小さくうなずいた。
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