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長辺に聖子とリュウが並んで座っていた。一家団欒の朝食みたいだと思っていたら、リュウは聖子が食事を始めて10分ほどで目をしょぼつかせはじめてしまうではないか。小さなロールパンひとつもまだ完食していない。
「眠いか、リュウ。慣れないところで寝たし、朝早くにお腹痛くて起きちゃったからな」
木崎がしゃべりながら席を立ち、キッチンへ向かった。「お風呂で大騒ぎもするし」と、わざとらしく聖子を睨む。
聖子も眉をあげて、肩をすくめたが、何も言い返さず朝食を続行した。
隣のリュウはと見ると、すでに食べながら寝落ちしそうな気配だ。ほとんど力の抜けた手から小さくなったパンを取りあげても反応がない。
「疲れたんだね。朝からお風呂掃除のお手伝いで大活躍だし」
「お疲れさん、だ」と、木崎が小さなプラスチックのマグカップに入ったミルクをリュウの前に置いた。「はい、ミルク飲んで、もう一回、寝よう、な」
条件反射のようにカップを手に取り、何も言わずに少しずつ飲んでいく。
「こいつさ」と、木崎がリュウに目を遣ったまま聖子に話しかけた。「少ーしだけ甘くしたぬるいホットミルク飲むと、催眠術にかかったみたいに、こてん、って寝ちゃうんだ。おまじない、だな。ああ、でも今日はそれも必要なさそうだ。さ、リュウ、寝直しだ」
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