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月曜日だけ出社し、1時間少々の残業をして、上司や部下に、良いお年を、と挨拶をして帰り、翌日も竜には保育園へ行ってもらった。大掃除などはしないが、普段はしない拭き掃除もして、処分する書籍などを分ける程度のことはした。
店は年末の忙しさのピークらしく、木崎からは早めに来てほしいという連絡があった。常連たちの予約のやりくりで、開店時刻を繰りあげるらしい。
木崎との連絡はほとんど携帯のメッセージのみだ。こっちは休暇に入っていても向こうは多忙だから、たとえ顔を合わせたとしても会話らしい会話もできないだろう。
聖子は正直なところ、ほっとしていた。やはりもう少し冷静になって、木崎の立場で考えられるようにならなければと思う。それには帰省がいい時間と空間を与えてくれるはずだと期待していた。
30日には啓子と西澤の家でランチをご馳走になる約束をしていた。夜は聖子の都合が悪いからと、昼にしてもらったのだ。
午前11時にバスで木崎の家へ行って竜を託した。
「今日は昼飲みするから、タクシー移動するね」
「西澤さんの料理の腕を確かめてきてくれ」
啓子の家でも、西澤がほとんどの料理をする。
「なにライバル心、燃やしてんの。勝負になんないって。それに今日は、啓子の実家から送ってきた神戸牛で、昼間っからすき焼きの東西対決。ふたりでもすき焼きは滅多にしないからって」
「それもなかなか興味深い。どう折り合いをつけるのやら。あ、啓子ちゃんは実家へ帰らないの」
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