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神奈川の実家で久しぶりの顔をいくつも見て、空白期間をすっ飛ばした多少噛み合わない会話をして、それなりに寛いだ気分に浸ったものの、それも二日めでもう疲れを感じはじめてしまった。
地元の親しかった男女ふたりの友人にも会ったが、今は専業主婦の女性の話には相槌すら打てず、どちらかというと男性とのほうが話は弾んだ。楽しく笑い合っていると、女性のほうが拗ねた様子を見せはじめ、焦った聖子は早々に会食を切りあげた。
何度もやってわかっているつもりだったが、帰省には仕事とは別の疲労感を伴うということを再認識した。
元日の夜に木崎に、竜はどうしているとメッセージを送ったが、梨の礫だった。冷たいやつだ、と胸の内で毒づいていたら、二日の夜、神社の背景で竜が新品のコートを着てシャチホコばっているところと、木崎とツーショットで笑顔の写真つきでメッセージが来た。
『話がある。明日、竜が寝てから来てほしい。また連絡する』
竜が寝てから、というところに引っかかった。また有佳から期間の変更でもあったのだろうかと、小さな不安を抱いた。
三日の夕方、マンションに戻り、駅前のスーパーで買った弁当を温めて夕食にした。
木崎の料理に慣れすぎてしまって、朝と昼はどうにかできるにしても、夜は自炊する気になれない。どうすればいいんだ、と頭を抱えたくなった。
木崎からは9時前に、竜の魔法のミルクが始まったというメッセージが届いた。
たった二日と少々だけれど、どうせなら竜と木崎のふたりに大歓迎されて「ただいま」と言いたかったと、ため息をつきながら車のキーをつかんだ。
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