17

3/19
170人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
 巨大ダイニングテーブルの角を挟んで座っていたはずの木崎が、椅子ごと聖子のほうを向き、そろえた膝の上にきちんと手を置いて深々と頭を下げている。 「ん……、なに……」  ゆっくりと頭をあげた木崎は、怒っているのか泣きそうなのかよくわからない顔をしていた。感情が読めない。 「よ……、ヨギちゃん……、聞いてなかった……」 「あ、ああ、ごめん。ちょっと考えごと……」  はあーっ、と大きな声を出すから、聖子があわてて、しっ、と抑えた。 「竜が起きる」 「ああ……。でも、ヨギちゃあん、ああ、もう……、ちゃんと聞いてよお」と、テーブルに肘をついて頭を掻きむしる。 「ごめんごめん。で、なに」 「なに、じゃないよお。俺、決死の覚悟で言ったのにい」 「こりゃまた大袈裟な」 「俺と籍を入れてください、って……」 「……おやま。あっ、あっりゃあ、わたし、決定的な台詞を聞き逃したってこと? あー、残念至極。でも、なんで、突然の方針転換。理由を述べよ」 「述べよ、って言われても……、うーん、まあ、いろいろあってさ」 「二日間で?」 「いろいろのすべてがこの二日間に凝縮されていたわけではない。でもまあ、いちばんの理由は、竜だな、やっぱ」 「竜がどうしたの」 「俺の話はうわの空で、竜になると身を乗り出すって、ちょっと、いや、かなり悲しい」 「いや、だって、木崎が何するかはだいたい予測がつくけど、竜はわかんないもん」 「だよな。やっぱ、予測できないよな」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!