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巨大ダイニングテーブルの角を挟んで座っていたはずの木崎が、椅子ごと聖子のほうを向き、そろえた膝の上にきちんと手を置いて深々と頭を下げている。
「ん……、なに……」
ゆっくりと頭をあげた木崎は、怒っているのか泣きそうなのかよくわからない顔をしていた。感情が読めない。
「よ……、ヨギちゃん……、聞いてなかった……」
「あ、ああ、ごめん。ちょっと考えごと……」
はあーっ、と大きな声を出すから、聖子があわてて、しっ、と抑えた。
「竜が起きる」
「ああ……。でも、ヨギちゃあん、ああ、もう……、ちゃんと聞いてよお」と、テーブルに肘をついて頭を掻きむしる。
「ごめんごめん。で、なに」
「なに、じゃないよお。俺、決死の覚悟で言ったのにい」
「こりゃまた大袈裟な」
「俺と籍を入れてください、って……」
「……おやま。あっ、あっりゃあ、わたし、決定的な台詞を聞き逃したってこと? あー、残念至極。でも、なんで、突然の方針転換。理由を述べよ」
「述べよ、って言われても……、うーん、まあ、いろいろあってさ」
「二日間で?」
「いろいろのすべてがこの二日間に凝縮されていたわけではない。でもまあ、いちばんの理由は、竜だな、やっぱ」
「竜がどうしたの」
「俺の話はうわの空で、竜になると身を乗り出すって、ちょっと、いや、かなり悲しい」
「いや、だって、木崎が何するかはだいたい予測がつくけど、竜はわかんないもん」
「だよな。やっぱ、予測できないよな」
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