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「それって、ひょっとして、どっちがいい、みたいなこと?」 「いや……、そこまで直球じゃない、つもりだったけど、結局はそういうことになるのかな。4歳の子どもにそんなこと訊くって、やっぱ俺、残酷な父親だよな。最初は、ちょっと迷って、ママのところに帰ったら、何がいちばん楽しみなんだ、って訊いた。そしたらさ、赤ちゃん、って言うんだ、あいつ」  木崎がまた頭を抱えた。これは木崎にとって残酷な返答だっただろう。竜に妹が生まれ、有佳もタイガも、子どもふたりに平等に愛情を注いでくれればなんの問題もない。だがその確信は、木崎も聖子も持てない。  もしも竜が有佳たちと生活しているうちに居心地の悪さを感じ、その理由がわかる年頃になったら。そしてその時になって木崎が竜に救いの手を差し延べて、それで間に合うものなのか。不確定要素があまりにも多すぎる。そのなかで竜にとって最善の道を選ぶのは容易ではない。  聖子には木崎にかける言葉を見つけられなかった。目の前の肩に手を置いた。
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