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 俺さ、と木崎が続けた。「有佳とタイガの様子をあれこれ竜に訊くのはいやだった。変なプライドがまだあるのかもしれないな。竜だって有佳に言うだろうからさ、パパにいろいろ話したよって。だけど、もういいやと思って、単刀直入に訊いたんだ。理解できないかもしれないけど、よく考えろって。ママたちと暮らして、時々パパやヨギちゃんに会いにくるっていうのがいいか、今みたいにパパとヨギちゃんと毎日暮らして、時々ママのところへ行って赤ちゃんに会うのがいいか、竜はどっちがいいと思う、って。時々、ってのは、5歳の時に1回か2回、6歳になってまた1回か2回くらいだぞって。すぐに答えなくていいから、ママが迎えにくるまで、よーっく考えろ、それでもわからなければ、わからないと言ってくれたらいいから、って。  そしたらさ、あいつ、なんて言ったと思う? それ、考えないといけないの、だって。考えなくても、こっちのほうが楽しいに決まってるじゃないかって。それは、こっちにはブロックのおもちゃや、電車やバスや面白い絵本があるからなのか、って訊いたら、しばらくじっと考えて、それもあるけど、ちょっと違う、って。何が違うんだって訊いたら、またしばらく考えて、パパやヨギちゃんが、ぎゅってしてくれるからだ、って。パパは抱っこもしてくれるし、ヨギちゃんは勉強も教えてくれるし、こことかここにちゅってしてくれるし、パパもヨギちゃんも、竜はどうしたい、って訊いてくれるもん、って……」 「それは……、わたしが言うことじゃないだろうけど……、こっちにあるものは向こうにはない、って解釈していいのかな」
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