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「ああ、新しいコート、着てたね」 「うん……。神社へいって、お詣りして、お守りを買ってやろうかと思ったんだけど、有佳にまたなんか言われそうな気がして、やめた。そしたら竜が、お守りってなにって訊くから、説明してやった。うまくできなかったけど、自分や大切な人に、神様へのお祈りの気持ちをこめて買って、持っていてもらうんだって。  神社を出て、屋台がいっぱい並んでいる参道を歩いてて、ヨギちゃんからもらったお年玉は竜のお金だから、好きなものを買っていいぞって言ったんだ。そしたら、ヨギちゃんにお守りを買うって言いだした。もう神社の外だし、人も多くて、もう一度戻るのは大変だから、また次にしようって説得した。たい焼きとかりんご飴とか綿菓子とか、そういうのを買えばいいだろ、って。  そしたらそこであいつ、テコでも動かなくなっちまった。いやだ、ヨギちゃんにお守り買う、ぼくのお金だから好きなもの買っていいって言った、ぼくはヨギちゃんにお守りを買いたいんだって。泣きはしなかったけど、大きな声で、いやだいやだ、お守り買う、絶対買うって。  その時、思い出したんだ、ヨギちゃんが言ったこと。竜、わがまま言えるようになったらいいね、って。子どもらしくわがまま言って困らせてもらいたいね、って。今俺、困ってる、って思ったら、これくらいのわがままはいいかと思えた。だからまた神社に戻って、どんなお願いをするんだって訊いたら、ヨギちゃんがずっとぼくの友だちでいてくれますように、ってさ。そういうのはないなあと思って見てたら『家内安全』ってのが目に入って、そん時だな、方法があるんだったら、とにかくやってみようって思ったの……。ヨギちゃん……」 「ん……?」 「ヨギちゃんがいてくれて、ほんと……、よかった……」
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