17

11/19
170人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「その話、いつきたの」 「7月だったと思う」 「それで、考えてたんだ。でも、わたしには商売のことはわからない。木崎がどうしたいか、だよね」 「新しくここでやるにしても、どこか別の場所でバーを続けるにしても、どちらにしろ借金をすることにはなる。もちろんどちらを選ぶかで金額の桁は変わるけど。それに、住むところもなくなる。2階までが店舗で、3、4階が事務所って心づもりらしい」 「おやおや、『フーガ』のマスター、路頭に迷うの巻」 「そう、その通り。最初にその話を聞いた時は、駅の裏の雑居ビルにでも移ろうかって思った。店も小さくして、酒だけにして、近くのワンルームでも探して、って。ひとりならそれで充分、生きていけるから。でもさ、だんだんやってみたくなってきたんだ。だから秋くらいからちょくちょくカフェへ行ったりして、夢を膨らませてたって感じだった。実現するのは難しいだろうけど、夢を見るのは勝手だろって。  そしたらさ、竜がきて、ヨギちゃんが籍がどうとかって言いだして、夢がますますリアリティ失くしていって、夢想に成長していった。幻想、かな。悪者をやっつけるヒーローになったり、異国のお城の王女様になるみたいな。新しいビルでカフェをやってる俺、竜がいて、ヨギちゃんがいて……。どういうわけか竜はランドセル背負ってて……。で、俺の部」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!