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「オレノブ?」
「そう、ヨギちゃんと……、籍を入れたいっていう理由の、俺のパート」
木崎がキッチンへ立ち、冷蔵庫から新しいビールの缶を取り出した。聖子の隣の椅子に座り、ふたつのグラスに注ぎ足して正面を向いた。「言っちゃったもんな」
「え……」
「言うつもりはなかったけど、俺、ヨギちゃんのことが大好きだって、言っちゃった」
遠くを見る目で頬杖をつく。
「にわかには信じらんないけど」
「え? そうかなあ。じゃあ、俺、芝居がうまかったってことか」
「そうじゃなくて、すべての女性に平等な博愛主義か、と」
「ふっ、なるほどな……」と、木崎は鼻先で小さく笑って、ひとり言のように続けた。「俺さ、するとしたら、ヨギちゃんは年上のどこかの大企業のエリートと結婚するんだろうって思ってた。銀行とか証券とか、なんかそんな感じ……。それか、大学の教授とか……。学者、って感じの、経済学とか社会学かな……。うん、でも法学じゃないな。物理とか化学なんかの理系でもない」
「勝手な妄想しやがって」
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