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「うん、勝手……。だから勝手に好きになるのはいいだろうって思った。まあさ、体の関係はあっても、気持ちは片想い。変かもしれないけど、それでいいって思ってた。竜がきて、誰にも言えなかった有佳とのことをヨギちゃんにしゃべった。竜とヨギちゃんが仲良くなって、これは困ったことになったぞって思いながら、俺、心の底では嬉しかったんだ。幸せだった。これでもう思い残すことはないってくらい、幸せだった。だってさ、俺の好きな人ふたりが仲良くなるんだから、こんな幸せなことはないだろ。だから、もうこれで全部終わってもいい、こんな素敵な時間が持てたんだから、もう全部失っても後悔はしない、って、思ったはずだったんだけどさ、人間って欲深いもんなんだな。手放したくないって気持ちが、毎日毎日、大きくなっていくんだ。もう自分でコントロールできないくらいに。こんな日がずっと続いてほしいって思うんだ。このままでいたいって思うんだ。困ったよ……。俺、本当に困った……」 「実家でね」  聖子が前を向いて静かに話しはじめた。「ちょっと親父とふたりになる時間があったんだ。たまたま、居間にふたりだけになって……。その時にね、わたしが男の人と籍を入れたいって言ったら、どうする、って訊いたんだ」 「へえ……。お父さん、なんて」 「いいねえ、って……。それでさ、籍入れたら、もうすぐ5歳の男の子の母親になるって言ったら、どうする、って」 「うん……」 「笑われた」
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