17

15/19
前へ
/205ページ
次へ
「10年……。10年で再検討」  木崎が口のなかだけで聖子の言葉を繰り返した。じゅうねんでさいけんとう、と、まるで音読して言葉の意味を理解する小学生のように。 「わたしは竜のために、それと、木崎が竜を引き取るために、これが最善の方法だと思った。だから提案した。竜がいなかったらわたしはこんなこと、言いださなかった。あんたもそうでしょ。竜がいなかったらわたしと入籍するなんて考えなかったはず。だから、3人で暮らして、そのまま順調にいったとして、竜が中学を卒業する時、もう一度立ち止まって再検討しよう。3人、それぞれの選択肢を明確にして。このまま、まあ、いわばこの契約みたいなものを更新するか、あるいは、最悪の場合、解消するか。竜には、その時に有佳さんがどこで何をしているのかはわからないけど、母親のもとに帰るっていうのも選択肢のひとつに加える……。いかがでしょう。この条件、飲めますか?」  木崎がゆっくりとうなずいた。 「3人……、3人で、暮らせる……?」 「そりゃあ、そのほうがコスト面でも効率的だし、竜も、今は二重生活で可哀想だし、ね。どう、この条件で合意する?」 「俺は……、俺は3人で暮らせるなら……、3人で一緒に住めるなら、どんな条件でも……、うん、合意する」 「合意成立。でも……」と、聖子がいたずらっぽい目で横から木崎を睨む。「一緒に住むようになったら、あんた困るんじゃない」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加