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 え、と木崎が、ぽかん、と空白の表情で聖子を見た。 「ピンクのシュシュのおねえちゃんとかティーバック愛用者のおねえさまをお誘いすることができなくなっちゃう」 「え……、いや、お、俺……、俺、そんなこと……」 「してない、とは言わせない」 「あ、いや、まあ……、あ、でも、でも、あの、ひとつだけ釈明させて。あのティーバックは、あれは、あの人とは、なんにもしてない。ほんと、ほんとーに、なんにもしてないから」 「なら、なんであんなものが残してあった」 「いや……、だから、あれは……、あれは、昔から知ってるお姉さんで、あの……、いわゆる、夜の接客業をしてらっしゃる方で、ひ、久しぶりに店にきてくれて、あらまあ久しぶり元気とかなんとかで、そんで、ちょっと……、だから、ちょっと……」 「ああ、あれだ、上で飲み直そうとかだ」 「え……、ああ、まあ……、まあ、そういうことで……」  聖子がくすくす笑っているのを見て安心したのか、木崎が、ふうう、と吐息をついて力を抜いた。「あのさ、下心がなかったとは言わない。ヨギちゃんが誘っても来てくれないことが続いてさ、ちょいイラついてたんだよな。でもさ、ここで、本当に飲み直したんだ。それで、しゃべってたら、つまんないんだよ、話が。ぜんぜん面白くなくて、俺、もう退屈で眠くなっちゃって、俺、寝るわ、って言ったんだ。飲み直したし、じゃあまたな、って言ったら、そいつが帰り際に、トイレ貸してって……。たぶんそん時に……、だろうなあ」
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