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「追い返された腹いせか。それにしても、あんたもそんなもん大切に保管しておかなくったっていいじゃない。真っ白な洗濯機の上に真っ赤なレースのティーバックって、目立ってしかたなかったよ」 「いや、俺、よく見てなかったから、なんだかよくわからなくて、ヨギちゃんが、あーら、忘れ物ってひらひら持ってきて、えっ、て思ったくらいで。ほんと、本当だって。でもヨギちゃんだって、この人、どうやって帰ったんだろうって、普通に平気な顔して、ミニスカートじゃなきゃいいけど、とか言うし」 「じゃあ、趣味の悪いピンクのシュシュは?」 「あ、あれは……、あれは、あ、あれはもう、だーいぶ前のことだろ。ヨギちゃんがここへくるようになる前のことだよ、きっと。しかもヨギちゃん、その忘れ物、ちょうどいいとか言って自分で使うから、俺、わけわかんないよ」 「えー、そんな前のことだったっけ? そうでもないような気もするけどなあ。時系列、疑惑だらけだわ」 「あのさ、誓って言うけど、俺、この1年以上、いや、2年近く、ヨギちゃん以外の女性はここに入れてない。ほんとだって。絶対に、ほんと。だって面白くないんだもん。つまんないから」 「ねえ、木崎……」 「うん……」 「もう20年近く前のことなんだけどさ、わたしね、『つまらない女だ』って言われてフラれたことあるんだ」 「え……。うわ……。なにそれ。失礼なやつ。こんな面白い女つかまえて……。あ、でも俺、そいつに感謝だわ。そのズレまくった男に感謝。フってくれたおかげで、今ヨギちゃんがここにいる。俺の永遠の片想い、継続中」 「なんでそうなるの。永遠の片想いって」
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