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聖子がリュウに話しかけた。
髪は寝癖でくしゃくしゃになり、顔も涙だけではないいろいろなもので汚れている。たぶん、今むきだしになっている下半身も気持ち悪いに違いない。身近に見てきた幼児といえば兄の子どもたちだけだが、子育て経験のない聖子でもわかる。こういうことはトラウマになったりするかもしれないから、直後のケアはしっかりしておいたほうがいい。
リュウが聖子をじっと見ている。警戒というより興味の視線に思えた。
「ヨギちゃん……、俺は、まあ、そうしてくれると……」
「ね、シャワー浴びて、きれいにしよう。お尻だけじゃなくって、顔も、頭も」
木崎を無視してリュウの腕をつかんで言った。
目を合わせたまま、こくん、とうなずいたリュウに、にっこり笑いかけた。
立ちあがり、消え入りたいといった顔つきの木崎の耳元で「あとで、説明」とささやいたら、息子とそっくりな仕草で、こくん、と首を上下させた。
リュウの背中を押してバスルームへ向かいかけたところへ、「あ、ヨギちゃん」と、木崎の声が追いかけてきた。「ありがとな。ごめんな」
こういうとこなんだよなあ、と聖子は胸のうちでため息をついた。ごめん、と、ありがとう、をきちんと言える男は嫌いになれない。
そして湧きあがる笑いを噛み殺した。女の子のショーツとトレーナーはセクシーでかわいいのに、男のボクサーパンツとスウェットって、間抜けだ。
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