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知らずのうちに笑顔になって、浴室のドアを閉めた。
「熱い?」
「いや、大丈夫だよ」と、手で少しぬるめの温度であることを確認した。「さあ、まずは、お尻からだな」
下半身に始まって、背中、腹と、首から下を濡らしていく。お湯を手のひらで受けて顔を拭ったら、リュウが自分で洗いはじめた。
「おっ、できるんだ。すごいすごい。じゃあ、次、頭いくから、目つぶって、耳押さえて」
言われたとおりにするリュウをまた、かわいいなあ、と見下ろしながら、後頭部から少しずつお湯をかけた。
一度シャワーを止め、木崎が使っているスポンジでボディーソープを目一杯泡立てた。
泡を両手に盛り、首から塗りつけていたら、リュウが、くくく、と笑いだした。
「気持ちいい?」
「あわ……」
「そう、あわあわ」
また、くくく。なんてかわいいんだ。「リュウくん、っていうんだ」
「うん……。キザキ・リュウ」
『木崎』の名前のままなんだ。聖子は離婚はもちろんのこと、結婚すらしたことはないが、この歳になると周囲に経験者はいくらでも見つけられる。だから子どもの名前と親権が別物であるということくらい、知識としては知っていた。ただ、母親が子どもを養育する場合、苗字を母親と同じものに変更するケースのほうが多いような印象がある。
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