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「何歳?」
「……4歳……。もうすぐ5歳」
そっか、と応えつつ、頭のなかで素早く計算した。
この子が生まれた時、木崎は39歳。離婚はそのあとだろうから、なんだ、別れたのはわりと最近のことなんだ。知らなかった。
「ヨギちゃん……?」
「ん? あ、そう、わたしはヨギちゃん」
「ヨギちゃん、ぱあとなあ?」
「え?」
「パパの、ぱあとなあ」
スポンジで泡立て直して、リュウの身体をくるくる回してあちこちを泡まみれにして、という作業を繰り返しながら考えた。
ああ、パートナー、か。しかしこの子が、入籍していない恋愛関係にあるふたりの成人のことを指してこの単語を使っているとはとても思えない。「ねえ、パートナーって、どういう人のこと?」
リュウの理解を測りたくて、訊いてみた。
するとリュウはけたけたと笑い、「えー、ヨギちゃん、知らないの? 大人なのに、パートナー、知らないんだ」とうそぶくではないか。
やっぱり、よくわかっていないのだ。でもこれで見えた。リュウの周囲に『パートナー』と称する大人がいるということだ。つまり、リュウの母親に。
「知ってるよお。でもわたしはリュウのパパのパートナーじゃない。リュウはパートナーって人、知ってる?」
「うん。たー……」
名前のようだったが、聞き取れなかった。でもそんなことはどうでもいい。
「ママのパートナー?」
「そうだよ」
当然、という顔をして応える。そういうことなのか? 母親はパートナーと出奔。邪魔になった子どもは父親のもとへ。いや、木崎の話を聞くまではなるべく先入観を持たないようにしよう。
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